量子コンピュータQ&Aシリーズ①「量子コンピュータが注目される理由【5選】」
こんにちは!理論派思考人です。
企業で量子コンピュータエンジニアを務める管理人が
「量子コンピュータ」について疑問を答えるシリーズ第一回。
今回はずばり
量子コンピュータってどうして注目されているの?
について徹底的に答えます。
では行きましょう!
量子コンピュータってどうして注目されているの?
「量子コンピュータ」は企業や大学といった組織から注目されているだけでなく
投資家や、はたまた国単位という非常に大きなスケールで注目を集めています。
どうしてでしょう?理由を4つ紹介します
①古典コンピュータを圧倒する計算スピード
量子業界では、私たちが普段使う従来コンピュータのことを「古典コンピュータ」と呼ぶのが一般です。
量子コンピュータは古典コンピュータが苦手とするような特定の計算分野において、圧倒的に速い計算スピードが期待されています。
例えばどんな分野でしょう?
それは「素因数分解」です。
素因数分解とは大きな桁の巨大な数をいくつかの素数の掛け算の形に分解することを指します。一般に大きな桁数の素因数分解は困難で非常に時間がかかります。
実は現在のコンピュータで私たちの個人情報を守るために行う「暗号化」は、この「大きな桁数は素因数分解ができない」ことを担保して行っているものです。
量子コンピュータは桁数の大きい素因数分解を高速でこなす、ということはShorという研究者によって「理論的に証明」されています。理論的に証明されている、ということは将来量子コンピュータが実用的な性能になった場合「素因数暗号は短時間で破れる」ことを意味しています。
②これまでそもそも解けなかった問題が解けるようになる
普段私たちがパソコンに「計算が遅いな~~」とか「計算結果が返ってこないな~~」といった「極端な不満」を感じることはないと思います。
つまり「コンピュータは大体問題解ける」と思っている方がほとんどだと思います。
しかしこれは誤解です。世の中には現状解けない問題が山ほどあります。
私たちには「コンピュータの恩恵を受けて解決できていない」種類の問題が山ほど残っています。
例えば創薬や材料シミュレーションといった化学計算でしょう。最近の話題でいえば「コロナのワクチン」といったパンデミック危機を解決するような物質は、神様がその設計図をおしえてくれるわけではありません。
コンピュータの力を使って、分子の設計図を作ったうえで開発に着手するのです。ワクチンをはじめとするこうした化学の計算は非常に難しく、古典コンピュータでは解決に時間がかかるとされています。
量子コンピュータはこうしたシミュレーションの分野で特に有望視されています。「解けない」あるいは「時間がかかる」ような問題にアプローチできるようになることは、とても重要です。
③従来コンピュータの演算性能に限界がきている
「ムーアの法則」をご存じですか?
「私たちが今使っているコンピュータの演算性能がどのくらいの勢いで成長するか」を予想した法則。これがムーアの法則です。
これまでムーアの法則に基づき、コンピュータのCPUチップのサイズが小さくなるにつれて計算性能は進化してきました。
しかし、最近「ムーアの法則は終わりが近い」と言われています。
理由は「チップが小さくなりすぎたからです」
チップが小さくなりすぎて、「これ以上小さくしたらチップとしての性質を失ってしまう」ぐらいにまで小さくなってしまったのです。こうしたチップの物理的限界により「もうあまり古典コンピュータの性能向上は見込めない!」という風潮になっています。
古典コンピュータに限界があるならばどうすればいいのでしょう?
そのための量子コンピュータです。人類は新しいコンピュータ「量子コンピュータ」を発明しました。古典コンピュータを活用するだけでなく、量子コンピュータの性能を成長させていこう!というのが今後の方針です。
④将来量子コンピュータによる恩恵は間違いなく大きくなるから
量子コンピュータはまだ芽が生えたばかりであり、技術的問題により性能が未熟なので今すぐ活躍する、というわけではありません。しかし、将来性やビジネスとしての価値は無限大です。
その理由は従来の古典コンピュータの歴史を振り返れば、明らかです。
「コンピュータ性能が向上することで人間が受けた恩恵の大きさ」を想像してみましょう。
昔のパソコン
20年~30年ぐらい前は例えばこのWindows95みたいな、ちょっと失礼な言い方を許してもらえるなら「クソデカパソコン」が家や仕事場にあって、「固まる」「計算が遅い」と文句を言っていたはずです。
それはまだいいほうです。もっと時代をさかのぼってみてください。幕末から昭和にかけて日本にはこんなキャッチフレーズがありました。
「読み・書き・そろばん」
「そろばん」という、いわば計算機=コンピュータを使いこなせれば安泰だ!のような時代があったことも意識してください。
こうした「そろばん」や「クソデカパソコン」といった計算機時代を振り返ったうえで、現代の高度な計算機時代を見てみるとなにが言えるでしょう?それは
「人間の生活様式」や「便利度合い」「社会構造」は常にその時代の「計算機の性能」に大きく依存している
現代はスマホ・iPhoneやiPadといった「内部に超高性能パソコンを搭載した小型タブレット」をだれもが気軽に持ち運べる時代です。計算機が持ち運べるようになったことで、人間の仕事スタイルの変化や生活様式に非常に大きな変化が生まれています。
計算機はそれだけ、人間の暮らしに密接に関係しているのです。
これを踏まえて、量子コンピュータに目を向けてください。
人間は新たに計算機を作り出しました。量子コンピュータです。
現在は量子コンピュータは性能が完全ではないため発展途上ですが、将来間違いなく人間の生活様式を変えていきます。
量子コンピュータの性能が成長するにつれ文明が発展していくのは、先ほど見た「そろばんからスマホへ」の例をみれば明らかです。もちろん、量子コンピュータを専門で扱える人材の価値は果てしなく向上し、量子コンピュータ業界は莫大な市場規模となっていくでしょう。
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⑤先行者利益の獲得
最新の世界時価総額ランキングを見てください。
GAFAMに代表されるようなこれら企業は「IT」の力を信じて、大きくなった企業群です。これらはいわば高度に成熟した「古典コンピュータの力」を使い、ビッグデータやアルゴリズムを扱うことで世界を支配する企業です。
この時代はまさに「計算機」や「コンピュータ」を使いこなしたものが勝つ時代です。
将来的にはこうした影響力のある企業群の中に、量子コンピュータを先行的に実現・活用するような未来の企業は間違いなく入ってきます。量子コンピュータという新時代の計算機が、価値を生む時代は必ず訪れます。
「先行者利益」という言葉があります。芽が出た当初から取り組んでいたまさに「下積みのころから応援していたファン」には特有の大きな成功や利益があるという意味です。
Googleやアマゾンが認知度の小さいころから計算機の活用に取り組み、徐々に存在感を強めていった例を見れば明らかです。
おわりに~量子コンピュータを始めよう!~
量子コンピュータがまだ出始めて、「多くの人があまりその内容・価値を知らない」今がチャンスです!
量子コンピュータについて学んだり、量子業界のマーケットに注目したりして「先行者利益」を狙いましょう!
「マーケターやエンジニアとして量子業界に関わっていきたい!」高校・大学で量子を学びたい!「将来安泰な仕事にチェンジしたい!」など多くの人にむけて今後も情報発信を続けていきます。
また、本記事を読んで「面白かった」「ためになった」「これも書いてほしい」という方がいらっしゃいましたら、コメントで声掛けいただけると幸いです。元気が湧いてきます